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必要性が起こってくるのです。
現在、世界にたくさんの国がありますが、これらの国の自然条件は非常に違っています。パキスタンは今お話ししましたように、十分な降雨がなく、灌漑がなければ耕作を十分に行いえない、乾燥した国です。また、非常に広大な面積を持ち農業資源に恵まれている国もあり、そうでない国もある。

 

それらの国がお互いに人間を自由に移動させることができるかというと、そうではありません。したがって、農業資源の乏しい国においては、食料が全体として不足する場合には、飢饅が起こり、飢餓に悩まされるということにならざるを得ません。しかし、それでは世界の平和は保たれません。
したがって、世界の人口と食料のアンバランスからくる問題を解決するにはどういうことが必要であるかについて私の提案を述べさせていただきますならば、次のようになります。現在は、先進国が食料をたくさん生産して、それを途上国に輸出をしているという形です。これは国際分業の原則からはずれています。なぜはずれてきたかというと、戦争の結果、食料が不足して、その不足に対応するために、戦争中、戦争後、先進国で食料の生産が続けられ、これが結果として生産過剰状態を生みました。途上国は本来、農業生産物を先進国に輸出していたのですが、先進国が過剰生産の結果生み出されたの農産物を途上国に売るようになってしまったことから国際分業の形がおかしくなってきたのです。
所得が低く、したがって、農業が優位性を持つはずの途上国が、農産物を輸入しているという矛盾が起こるのです。これを直すことが世界の食料の自給の安定を維持するために必要だと思います。
また、少なくともそれぞれの国が自分の国の必要食料の60%、70%を自分の国で確保するようにしておかないと、一旦、全体としての食料の不足が起こった場合に、各国は最低限度の食料を自国民に供給し、その社会の安定を保つことはできません。そのためには、たくさんの国の持っている自然条件に応じた対応策をとることが必要と思っています。
つまり、水の不足の国に対しましては、ダムを作るとか、あるいは運河を整備すること等で、水が豊富な国と同じように、あるいはそれに近いように自然条件を変えていくということ。水の豊富な国の場合、水に関しそれほどの努力の必要はない等、各国の持つ自然条件に応じてとるべき対策は異なってくるのです。これら、自然条件の面から見た各国がとるべき対応策に対して、国際機関や二国間の国際協力が必要であり、これ食料安全保障を実現するための基本的な条件となると考えます。その意味でパキスタンを1つの例といたしまして、申し上げたわけでございます。

 

 

 

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